INT. 城の闘技場 - 通用路 - 朝
磨かれた係官用の鎧を着たJuneが、キューカードと儀礼用の手綱を持って立っている。「東方監視塔の恐怖」の異名を持つ巨大なドラゴンCalは、小さすぎる幕の陰に体をたたんで隠れ、尻尾だけが出ている。
Cal
ドラゴンは本日休演と伝えて。発熱、王室の緊急事態、突然の渡り。品位のあるものを一つ選んで。
June
幕の下から尻尾が見えてるよ、Cal。楽団の入り口を塞いでる。
Cal
見えているのは、鱗が見事な飾り綱。私は別の場所にいる。
June
その飾り綱、兜を3つ倒して、お菓子のテーブルに敬礼したけど。
June
あと3分で触れ役が名前を呼んで、私が門を開ける。
Cal
なら触れ役には、別の名前を覚える時間が3分ある。
June
Cal、昨日は全部飛んだでしょ。着地点、王族への礼、炎の輪、最後の咆哮。
Cal
羊6頭、庭師2人、彫像1体の前で練習した。誰も両手を打ち鳴らさなかった。
June
夕食のあと、きしんだだけの食料庫の扉に吠えてたよ。
Cal
食料庫は『東方監視塔の恐怖』と唱えて、私の胃を逃げ出させたりしなかった。
June
王国一恐れられるドラゴンが、あがってるってこと?
Cal
膝を打楽器にしている者の不正確な診断は受け入れない。
June
歯は確認、翼は伸ばした、火炎腺も温かい。けがはない。
Cal
何度もつつかれ、威厳は傷ついた。それ以外は、すべて見事に作動している。
June
王族、評議会、それに900人の生徒が待ってる。主任として初めての公開演技なの。
Cal
だからだ。昼を暗くする獣が来ると約束されている。私は静かな朝食のほうがいい。
June
みんな怖がってるよ。くしゃみで攻城盾を溶かしたでしょ。
June
儀礼用の手綱が冷たいの。金属は隙間風で冷えるから。
Cal
ここは地下だ。風はない。それに、その手綱は私につながっていない。
June
準備はできてる。キューも、安全確認の号令も、14か所の非常口も全部知ってる。
Cal
今朝、モップを女王陛下と紹介して、兜が落ちるまでお辞儀していた。
June
あのモップ、厳しい顔をしてたから。暗ければ誰だって間違える。
June
何のこと? 朝食、体温、翼幅、機嫌、幕への妙な関心まで全部報告した。
Cal
なぜ心臓が、鎧を着て階段を駆け下りるウサギの音を立てている?
Cal
ドラゴンだから。観客は屋根に降る雨みたいだ。君の音は、鍵のかかった部屋の内側から誰かが金づちを振るっている。
June
あなたを落ち着かせるのは私の責任。私の気持ちは進行表に入ってない。
Cal
責任感は、怖さの反対ではない。クリップボードを持って怖がっているだけのこともある。
June
失敗したら、主任のVennに昼までに幼竜係へ戻される。
Cal
幼竜は好きだろう。緑の子を長靴で寝かせていた。
June
大好き。でも私がここで訓練するために、家族は王国を半分も横切った。任命されたのは家族で私が初めて。戻ったら、準備できてなかったってことになる。
Cal
だから皆の前で私に堂々としてほしい。そうすれば、隣に立つ君も堂々として見える。
June
そう。怖くてたまらない。リハーサルでは自分の名前を忘れた。門が揺れると、覚えたことが全部消えて、『火のそばで気絶しない』しか残らない。
Cal
言ってくれてありがとう。私も怖くてたまらない。
June
あなたが? 雷砲の音でも寝てたし、警告旗を食べたでしょ。
Cal
旗は柔らかい。人の顔は違う。怪物を求めて唱えられると、怪物としてしか扱われなくなる気がする。
Juneはカードに描かれた炎のキューを見て、束をきれいに半分へ破り、両方を耐火バケツへ落とす。
June
じゃあ、演目を変える。
June
輪も、鎖も、偽物の襲撃もなし。一緒に出て、太陽の印で止まり、一度息をして、礼をする。
JuneはCalの展示用のとげ付き首輪を外し、捨てたキューカードの上に儀礼用の手綱を置く。幕の向こうで、観客が同じリズムの掛け声を始める。
June
上を向いて、『儀礼用の天気です』って言う。
Cal
隣に立ってくれる? 長い鉤を持って、安全壁の後ろに隠れずに。
June
隣に立つ。必要なものが分かるから、私はあなたの係なの。今日は相棒が必要。
Cal
大フィナーレは? 恐怖の分まで高い料金を払っている。
門が上がる。Juneの手は震えている。Calが片翼を下げ、Juneはそこへ手のひらを置く。二人は並んで闘技場へ出る。Calが吐いた小さな煙の輪が最前列の上に浮かぶ。一瞬の静けさのあと、拍手が膨らむ。JuneとCalは驚いた笑顔を交わし、礼をする。
June
正直な呼吸を一つ、礼を一つ、それから出てきた炎をそのまま。怖がらせる義理はない。